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国際共同開発の防衛装備品の第三国輸出をめぐり、自民、公明両党は日英伊3カ国が共同開発する次期戦闘機に限って認めることで合意した。
岸田文雄首相が歯止め策を示し公明が評価して容認に転じた。
次期戦闘機の輸出対象は「防衛装備品・技術移転協定」を結び、現に戦闘が行われていない国に限る。個別の案件ごとに与党の事前審査を経て閣議決定する。今回の合意を受け政府は防衛装備移転三原則の運用指針改定を閣議決定する。
次期戦闘機の第三国輸出が可能になることを歓迎したい。望ましい安全保障環境創出のため積極的に実現したい。
次期戦闘機は令和17年までの配備が目標だ。日本と移転協定を結んでいるのは現在15カ国でオーストラリア、インド、シンガポール、インドネシアなどインド太平洋の国が多い。
輸出を実現すれば、調達単価を低減できる。安全保障上の同志国を増やすことにもつながる。力による現状変更を志向する中国などへの抑止力が高まり、日本の守りに資する。
ただし、与党合意には問題もある。殺傷力のある防衛装備品の輸出は平和国家日本の在り方に反するという誤った思い込みから、できるだけ抑制しようという発想が残っている点だ。
次期戦闘機以外に国際共同開発の装備品輸出の必要性が生じれば、改めて与党協議を経て運用指針に加えるという。
本来は、次期戦闘機に限らず一般的な原則として輸出解禁に踏み切るべきだった。煩雑な手続きを嫌って日本との共同開発をためらう国が現れれば、日本の平和と国益が損なわれる。
現に戦闘をしていない国に限るのも疑問だ。実際に侵略され最も苦しんでいる国に救いの手を効果的に差し伸べることを禁じるつもりか。輸出の可否は個別に政策判断すればよい。
日本が侵略される場合、殺傷力のある防衛装備品を提供する国が現れなければ、自衛官や国民の命が一層多く失われかねない。米欧がウクライナへ火砲や弾薬など防衛装備品を提供しなければ侵略者ロシアが凱歌(がいか)をあげるだろう。そのような非道な世界に直結するのが、防衛装備品輸出を批判する偽善的平和主義の謬論(びゅうろん)である。輸出範囲を不当に限定する移転三原則の5類型の撤廃が欠かせない。
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2024年3月17日付産経新聞【主張】を転載しています